TCFDの枠組みに基づく開示

イノテックは、気候変動をはじめとする環境問題を重要な経営課題の一つと認識し、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」というパリ協定の長期目標の実現を目指しています。マテリアリティ(重要課題)の重点テーマとして「持続可能エネルギーへのアクセス確保」、「環境負荷低減製品での環境貢献」、「地球環境、気候変動への配慮、貢献」を掲げ、気候変動がもたらす事業上のリスクと機会について識別、評価、分析し、それを経営計画や事業戦略に反映することで、中長期の持続的な成長を実現します。
イノテックは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえ、情報開示の充実を図ります。

ガバナンス

イノテックは、ESGやサステナビリティに関する基本方針や重要事項等を審議する場として「サステナビリティ推進会議」を設置しています。「サステナビリティ推進会議」は定期的に開催され、常勤執行役員と各事業部門長、そして国内グループ会社の代表者が参加し、サステナビリティに関する取り組みを推進しています。

「サステナビリティ推進会議」では、定期的に(年に1回以上)気候変動リスクを分析し、最新の状況を踏まえて対応方針や具体的な取り組みを協議しています。同様に、気候変動に関する機会の識別、評価も行い、事業戦略に反映しています。
「サステナビリティ推進会議」では、当社が掲げる目標や取り組みについて、進捗状況をモニタリングしています。
「サステナビリティ推進会議」は、当社のCSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者)である代表取締役 社長執行役員が主催し、サステナビリティ推進担当取締役が議長を務めます。代表取締役 社長執行役員およびサステナビリティ推進担当取締役は、気候変動に関するリスクと機会の状況について定期的に(年に1回以上)取締役会に報告し、取締役会は、気候変動リスクの管理状況を適切に監視、監督できる体制を整えています。
取締役会は、各種の経営判断を行う上で、気候関連問題を考慮しています。

戦略

イノテックは、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」というパリ協定の長期目標の実現を目指し、当社および国内グループ会社を対象に、気候関連のリスクと機会の重要性を評価し、事業戦略に反映しています。
イノテックグループの事業における重要なリスクと機会の内容とその影響度、対応方針は次の通りです。

イノテックグループの事業における重要なリスクと機会、影響度、対応方針
区分 内容 影響度 対応方針
リスク 移行
リスク
政策・
法規制
カーボンプライシング(炭素税等)の導入や再生可能エネルギーの使用義務化などによるコスト増加
  • ・政策動向のモニタリング
  • ・政策導入時の影響額把握
    (※2)
  • ・徹底した省エネ活動
  • ・本社ビル屋上へのソーラーパネルの設置
  • ・顧客への価格転嫁
技術 自動車産業におけるパワートレイン(※1)分野の縮小に伴う技術優位性の低下
  • ・パワートレイン以外の分野向けの製品開発、販売
  • ・パワートレイン以外の分野向けのサービスの提供
市場 ガソリン車の販売規制と世界的なEV車へのシフトチェンジ
自動車業界再編に伴う日系自動車メーカーのシェア低下
  • ・EV向け事業の拡大
  • ・新興自動車メーカーや海外自動車メーカーとの取引拡大
  • ・他分野への進出
物理的
リスク
急性 大雨や洪水などの自然災害によるサプライチェーンの断絶、部材調達難
  • ・代替部材の並行評価
  • ・長期部材先行手配
  • ・部材共通化(発生リスクの低減)
  • ・継続的なBCPの見直し、管理体制強化
慢性 長期的な平均気温上昇、降雨パターン変化、海面上昇などによるサプライチェーンの断絶、部材調達難
機会 製品及びサービス 製品の省電力化、省スペース化要求への対応
  • ・研究開発活動への投資
DX推進に伴う物流や生産の効率化や省人化
  • ・クラウド決済システムやファクトリーオートメーションツールの浸透
市場 エレクトロニクス技術の活用機会の増加
  • ・気候変動の緩和に寄与する製品・サービスの提供
  1. パワートレインとは、エンジンで作られた回転エネルギーを駆動輪へ伝える為の装置類のことです。
  2. カーボンプライシング(炭素税等)の導入や再生可能エネルギーの使用義務化などによる財務的な影響は概算で次の通りと認識しています。
項目 財務的な影響
炭素税 炭素税価格(千円/t-CO2) 10
炭素税課税に伴うコスト増(百万円) 16.2
再生可能エネルギー由来の電気料金 再生可能エネルギー由来の電気料金の価格増(円/kWh) 2
再生可能エネルギー由来の電気の調達に伴うコスト増(百万円) 4.3

(前提条件)
イノテックの2023年度のScope1・2の温室効果ガス排出量および電力使用量は次の通りです。当社では本社ビルの空調システムに都市ガスを使用していますが、都市ガスのエネルギー使用量は全て当社に含めています。一方、電力使用量は、本社ビル全体からテナントがエネルギー管理権原を有している分を除いた当社事務所および本社ビル共用部分の合計値となります。

・イノテック株式会社 Scope1・2 温室効果ガス排出量

単位(t-CO2)
会社名 2022年度 2023年度 対前年度増減
イノテック株式会社 1,628.6 1,512.7 ▲7.1%
  • 都市ガスのエネルギー使用に伴う温室効果ガス排出量の算定には、東京ガスが公表する中圧供給(15℃、ゲージ圧0.981kPa(100㎜H2O)の状態)の排出係数2.19〔t-CO2/千㎥〕を使用しています。
  • 2022年度の電気のエネルギー使用に伴う温室効果ガス排出量の算定には、環境省が公表する「電気事業者別排出係数一覧(令和5年提出用)」の東京電力エナジーパートナー株式会社の調整後排出係数0.000456〔t-CO2/kWh〕(メニューJ(残差))、2023年度の電気のエネルギー使用に伴う温室効果ガス排出量の算定には、「電気事業者別排出係数一覧(令和6年提出用)」の東京電力エナジーパートナー株式会社の調整後排出係数0.000390〔t-CO2/kWh〕(メニューG(残差))を使用しています。

・イノテック株式会社 電力使用量

単位(kWh)
会社名 2022年度 2023年度 対前年度増減
イノテック株式会社 2,137,549 2,156,402 8.8%

リスク管理

イノテックでは、気候変動リスクを的確に識別、評価、分析し、適切に対応することが、中長期の持続的な成長と企業価値の増大につながると考えています。

当社では、「サステナビリティ推進会議」において、「政策・法規制」、「技術」、「市場」、「評判」からなる移行リスク、「急性」、「慢性」からなる物理的リスクを網羅的に抽出し、発生の可能性と影響額の大きさを基に評価、分析し、イノテックグループにとって重要なリスクを特定した上で対策を検討し、その進捗を管理しています。また、抽出したリスクの変化や、新たなリスク発生の有無を定期的に(年に1回以上)確認し、発生の可能性と影響額の大きさを基にあらためて評価、分析して重要なリスクの見直しを行った上で対策を検討し、その進捗を管理することで、リスク管理水準の向上に努め、円滑な事業運営を行っています。

「サステナビリティ推進会議」で議論された内容は、定期的に(年に1回以上)取締役会に報告され、取締役会は、気候変動リスクの管理状況を適切に監視、監督できる体制を整えています。

指標と目標

イノテックは、気候変動リスクを管理するための指標として、Scope1・2の温室効果ガス排出量を採用しています。イノテックの2023年度のScope1・2の温室効果ガス排出量は、1,512.7 t-CO2でした。

  1. 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
  2. 他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出

イノテックは、「2050年までにScope1・2の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という目標を設定し、ISO活動の一環として本社ビルの照明の完全LED化や本社ビルの屋上への太陽光パネルの設置など、徹底した省エネルギー対策を実践しています。さらに、再生可能エネルギー由来の電力調達を具体的に検討するなど、カーボンニュートラルの実現を目指します。